吐露んべ。

とあるオタクの雑記帳(スクラップ)

Heaven's Feel III. spring song 気づいた点など纏め

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Heaven's Feel III. spring song しかと見届けました。

引きずるものがなく、余韻というよりは読後感の残る映画でした。

しみじみと良かった……。

 

ひとまず完走を祝して制作陣には感謝の想いを。

 

www.fate-sn.com

 

総評としては、三部作を通して「Heaven's Feelの映像化」というよりも「桜ルートの映像化」であると感じました。

原作イリヤルートないし言峰ルートとしての側面も色濃くある中で「間桐桜」に焦点を絞って換骨奪胎した、まさしく桜のための映画であると言えます。(テーマごと一新するような、いわゆる令和アレンジではない)

 

以下は印象的かつ細かめの描写の箇条書き。記憶が損なわれないうちのメモ代わり。

大テーマや士郎、桜、凛、イリヤ、言峰に関しては別途まとめる予定。

 

 

・セイバーオルタ

士郎への未練といった感情の残滓をほとんど見せることなく、終始、桜のサーヴァントに徹している印象でした。取り立てて最期に救いが待つでもなく、いい意味で今回は脇役。寂しくもある一方、原作以上に覚悟完了した元マスターへの彼女なりの誠意かもしれないな……などと思いつつ。戦闘シーンは魔眼のデバフを受けているとはいえ、圧巻のひと言。

 

・Q.「遠坂は?」→A.「庭に埋めてきた」

序盤。ヘドロばくだんで魔力を消耗した遠坂の容態について尋ねるシーン。

これは実際そのままの意味で、遠坂家が冬木の霊脈として優れた地であり、もともと吸血鬼のねぐらであった事もありそうした方が回復が早いという合理的な判断から。

しかしそうした説明はこの先なんの関係もないので当然カット。事情を知らない視聴者には「オッサンの不謹慎ジョーク」みたいに映ってしまいました。というか士郎も顔をしかめるだけで特にツッコまなかったのでそう思ってる事でしょう。

 

・言峰、動く

原作では攻略対象かと思うくらい絡んでいたにもかかわらず、制作上の判断から出番を削りに削られ、三本目を撮る頃には麻婆食ってる間にサーヴァントが全滅した言峰。

それでも事実上のラスボスとして君臨すべく、急ぎオープニングから表舞台に出る決意を固めます。

HFにおける出番のほぼすべてが集約されている事もあって、彼の破綻者ぶりを象徴する妻・クラウディアのエピソードは念入りの描写。細かい点を言えばSN時点のモノローグで自身の子を認知するのは初めてな気がする。Ha映像化お待ちしています。

 

・是・射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)

これを観に来たといっても過言ではないシーン。

満を持して流れる梶浦版の「EMIYA」にただ涙。多くを語る必要はないでしょう。

ひとつ挙げると、投影を通じてヘラクレスの憑依経験を丁寧に描写しているのが好感触。かませ犬ではなく乗り越えるべき壁としての役割も大英雄の格ならでは。

 

・始まりの御三家と魔術絡み

断片的に語られるのみだった、冬木の儀式が描かれた画期的な場面。手を引いて舟を降りるなど、FGO1部4章を経てさらに補強された臓硯→ユスティーツァへの激重感情は健在。

そしていまや「カレスコおじさん」として正体不明のまま需要だけが一方的に高まるゼルレッチ爺も初アニメ化。終盤にはNew士郎ボディを二束三文で卸しに来た橙子さんの後ろ姿が映るなど、型月世界における二大ビッグゲストの登場は型月ファン垂涎の一幕となりました。

ただしそうした魔術世界の詳しい背景はやはり不純物なのでほぼ説明せず。ゼルレッチはともかく、士郎の身体に関しては「魂の物質化→橙子の義体に定着」の過程が初見だとかなり気持ち悪い感じに映ってやしないかと不安なところでもあります。

 

・ライダー

第三章のMVPサーヴァント。テーマ的にもHFは反英雄の活躍が著しいなとあらためて。公開と同時期にFGOで星5として排出されたら狂っていたであろうマスターも多い事でしょう。やれやれ、なんとか致命傷で済んだぜ・・・

戦闘中、素顔のカットはかなり近年の武内絵っぽいなと感心。得意げに「士郎が気になりますか?」と煽るところなんかはそれらしさが全開。

Fateルートで敗れた聖剣に打ち勝つのは英雄譚へのアンチテーゼっぽくて好きな描写でしたが、アイアスの盾で減衰しながらというのは、改めて見るとギリシア神話の面目躍如。アトランティスポイント+300000000000点。

 

・臓硯の最期

「HFはよかった。特にラストシーンで臓硯が親を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンはしには見られなかった」

個人的に型月で一番好きかもしれないのがこの間桐臓硯という人物。とりわけ今回のグランドフィナーレを迎えるにあたって、最も本質的な「生きていたい」という願いを一番シンプルに体現していた人でした。

パンフレットに曰く「マキリの理想は届かず夢のままに潰えるように」というきのこディレクションがアーチャーを否定した衛宮士郎に通じる意味でも、HF全体のテーマを咀嚼する上では最重要人物とさえ言えるかもしれません。

ところで、臓硯の本体を引き抜くにあたって自分の胸をまさぐる黒桜の表情が淫靡に火照っていて最高でした。アサシンは不憫。

 

・「鍵」

staynightの締めとして本作に託されたテーマは「非日常から日常への回帰」であり、それを司る、帰るべき場所の象徴こそ桜の鍵でした。

劇場版でも文字通りのキーアイテムとしてかなり強調されていたように感じます。この鍵の暗示は「空の境界 矛盾螺旋」でも臙条巴の拠り所として機能しており、奈須きのこの作家性が垣間見える瞬間といえるでしょう。また、アニメーション作品としてもufotable制作の後発として、アーチャーを追い抜く士郎にSprinterの場面を思い起こさずにはいられませんでした。