吐露んべ。

とあるオタクの雑記帳(スクラップ)

Heaven's Feel 第二章雑感(ネタバレ)

※ネタバレ注意(未見の方はバック推奨)

 

 

 

 

 

「劇場版Fate/stay night Heaven's Feel Ⅱ.lost butterfly」を鑑賞しました。

結論から言うと、完璧なHFでした。Fateエロゲー!(大声)

以下に雑感。思い出し次第、追記します

www.fate-sn.com

 

 

士郎の人間味

まず、士郎視点でのHeaven's Feelは英霊幻想へのアンチテーゼ。より端的に言うと、衛宮士郎が人間になる物語だと個人的には考えています。今回の第二章では、そのベースが概ね完成したように思います。如実なところでは過去のUBWで「壊れたロボット」の側面が強調され歪ですらあった士郎の表情が、本作ではこれまでにないくらい人間味を増していたり。


f:id:trombedgg:20190113223538j:image

↑これがデフォルト

 

士郎のデフォルトは「功利主義的な正義感の下で自分の身はもちろん、場合によっては親しい人物すら顧みない破綻者」なのですが、間桐における桜の来歴を知ったことや一緒に過ごした期間の長さを踏まえて、わりと早い段階から根本の信念に揺らぎが生じます。(いわゆる「レイン」の場面)

ただしここで「桜だけの正義の味方になる」と決めるより以前、すなわち第一章で士郎が見ていたのは彼の知る桜でしかなく、本作では見落とされていた桜の本質的ないし致命的な部分が徐々に暴かれていきます。

 

いちばん驚いた場面は士郎が他者の犠牲を踏まえてなお、これまでの信仰と決別することを選び、ついに「涙を流した」場面です。本来は当たり前のはずの感情ですが、これまでの彼は個人としての喜怒哀楽が著しく欠落ないしは取り繕ったもので、まして泣くなんてことは他ルートを通じても一切ありませんでした。単純なことながら凄まじいシーンです。

 

桜に「先輩はなにも裏切らない人ですから」と言わせてから「ああ、裏切るとも」は卑怯。次の朝、桜の部屋を訪ねた時の「桜、おはよう」は若干震え声になっていて声優の技を感じました。

 

まったくの余談ですが、学生時代に走り高跳びをやらなかったことを改めて深く悔いております。

 

いろいろ剥き出しになる桜

ヤ り お っ た (二重の意味で)

時は西暦2019年。ヘブンズフィール映像化……PC版! 度肝を抜かれました。

誤解のないように言っておくと他のルートとは異なり、HFにおけるベッドシーンというかセクシャルな描写には明確に意味があります。間桐桜の人格形成に大きな影を落としている部分で、彼女の本質と変化、そして士郎の変化を描くうえで必要不可欠なところでもあります。今回で言えばそのシーンがなければ絶対に、桜が凛のことを「姉さん」と呼べるだけの心の余裕は生まれませんでしたし。とはいえ既にレアルタ・ヌア(全年齢版)があり、またシリーズ全体が一般に膾炙していく中、まさかこうも直接的にやるとは思っていなかったので……すごい。Fateエロゲー

 

そんな具合で第二章は間桐桜間桐桜たる部分が100%濃縮されてました。さくら100%。たとえば……日々の凌辱、抑圧から内面に黒々とした鬱積、怨恨、呪詛が溜まっていく桜。そんな彼女の心を解きほぐしていったのが士郎の、優しさというにはあまりに歪な意固地さでした。特に映像化にあたっては、「大事なもの」を渡されるシーンが決定的だったことが目にハイライトが灯ることで示されています。今作は桜に限らずけっこう瞳の色合いは要点だと思いますね。そんな桜自身も頑なさでいえば負けず劣らずで、凛ですら曲げられない士郎を二度も曲げさせています。こういう似た者同士なところが士桜の魅力ですね。(早口)

 

……などと、ほんの触りを書いただけでこの文量。まして今回は桜の変化がほぼ全編に渡ってしまうのでとても書き切れるものではありません。まとめられたら別に記事を設けようかと思いますが、まぁ無理でしょう。夢の話とかしたいですけど。とにかく桜のための映画でした。

 

慎二のアイデンティティクライシス

ワカメ乙。ついに原作CGを完全再現して逝ってしまいました。何気に生存ルートが一つしかない哀しい運命。


f:id:trombedgg:20190114155259j:image

 

HFでは慎二も前面に出てきますが、それが災いして「自身が魔術師(=間桐の後継者)でないこと」のコンプレックスが一層痛ましく突き刺さります。

セイバールートやUBWでは曲がりなりにも桜の代わりにマスターとなった事で自身への期待を意識できたこと、従えているサーヴァントがそれなりの活躍あるいは実力を持っていたことなどで表面上のマウントが取れていた(本人は道化的なポジションに気付いていない)のですが、今回は士郎が自分より強力なサーヴァントを得た魔術師である事が早期に発覚した上、桜の覚醒で間桐における自身の価値が希薄化したことでプライドがズタズタ。中盤までは桜以上に情緒が怪しくなっています。

 

よりによって桜が「間桐の魔術は奪うばかりで還元されない」という言った直後に発された、「お前が盗ったんだぞ衛宮ぁーッ!」の叫びたるや……。

 

今回の劇場版では慎二のコンプレックスを刺激する描写(自身が欲するものを全て持っているように見える士郎、周囲が桜に注目して蚊帳の外であること)が強調される一方、彼の妬みがどういった境遇に起因するかは最後まで明示されませんでした。実際、俯瞰すれば同情に値する話ではあるのですが、桜にとってみればひたすら酷い奴でしかないのもあり仕方のない部分でしょう。監督曰く、「慎二への感情を観客に押し付けたくなかった」との事。

最後の涙は、もはや義妹を穢す形でしか士郎の目を自身に向けさせる事が出来ない恥辱や彼なりの慙愧の現れではないかな、と個人的に。


f:id:trombedgg:20190114155359j:image
f:id:trombedgg:20190114155412j:image

 

アクション

なんといっても一番はセイバーオルタvsバーサーカー。分かっていたことながら、いつでも聖剣ぶっぱできる王は強い。案の定、劇場から出た直後は「なんでオルタ星四(FGOのレアリティ)なの?絶対星六くらいあったわ」という言葉があちこちから聞こえてきました。さもありなん。

 

さて。この戦闘はオルタ側が出力に制限のないリミッター解除状態であったのに対して、バーサーカーは呪層界のデバフと純英霊に対するメタフィールドという最悪の立地ハンデがありました。強すぎるせいとはいえ、喚ばれる度に聖杯の泥が待ち構えているヘラクレスくんカワイソス。

しかしギリシア最強の英雄は止まることを知らず、オルタ相手に猛攻を仕掛けます。狂化しているにもかかわらず鉄なり瓦礫の山を力いっぱいに投げつけ、接地しない空中から有利を取りに行くなど……先のUBWにおけるギルガメッシュ戦といい、英雄としての圧倒的な格を見せつけてくれますね。英雄へのアンチテーゼが色濃い本作においては一際映えるところでしょう。

最終的には、オルタがバーサーカーのボディブローに対してまさかのカウンターアッパーをキメて決着。パンフレット曰くこのカウンターは、バーサーカーが負ける理由が思いつかなかったので一章でセイバーが受けた攻撃を反転してもなお覚えていたから」とのこと。意外と根に持つタイプだった。

 

 

以下は私的に気になった細かいところなど。

 

アーチャー

今回のルートではいぶし銀的なカッコよさ。正規の英霊でないがゆえにバーサーカーやランサー以上に戦えるという皮肉な役回りです。士郎にアドバイスしつつ、紅茶を入れるのは嫌がったり。今後の伏線としてしっかりローアイアスを張っていくノルマを達成しつつ、惜しまれながら退場。凛をいとおしげに撫でる場面は分かっていても泣いてしまいました……。

イリヤ

いもうt……おねいちゃん。今回は士郎との関係性やアインツベルンのマスター、本来の小聖杯として桜の動向を見守るなど何気に多面性がある立場。衛宮邸に来てからはほとんど表情を変えずに士郎と桜をじっと見ています。あと、雨のシーンでは彼女だけまったく濡れていなかったり。 

言峰&金髪の青年

かたやヒーラー、かたやついに誰にも知られないまま脱落。言峰に関してはよく見てないとまだギリギリいい奴に見えるかも。今のところあまりに回復ばかりやるので、左腕移植の場面までやってたら完全に「教会に行くと回復してくれるRPGの司祭」の役が板についていた事でしょう。セーブポイントか。

私的には桜の治療に魔術刻印を躊躇いなくつぎ込んだという、切嗣が畏怖した執着のなさと自己犠牲を顧みない士郎との鏡合わせを思わせる演出が高得点でした。まぁ単に余った令呪を突っ込んだだけかもしれませんが。桜の処分を決めた凛に対しては、愉悦スマイルを忘れない。

 

この二人のシーンで印象的だったのは、自身の懊悩に答えを出せる存在としてマキリの杯を渇望する言峰に対し、ギルガメッシュがどこか冷めた表情だったこと。悪巧みには基本ノリノリで乗っかるSN版英雄王としては珍しく、よほど桜が不憫に見えたのだろうか。そうであれば細かいフォローアップだなぁ……と感心しました。

まぁそういう思わせぶりな登場とは裏腹に、哀しいまでにほぼ原作通りな最期を迎えましたが。断末魔がカットされていたのがせめてもの救いか。(最期のセリフはレアルタ版とは違って驚愕ではなく惚悦、感嘆のニュアンス)

マキリ陣営

セイバーオルタはまさかのセリフひと言。一応、原作では鶴翼三連を披露するデッドエンドの都合か、士郎への未練を垣間見せるセリフがありました。

アサシンは「ギ?」とか不気味さを保ちつつまた面を割られるなど。最期は桜にも割られていたのでこれが原作通りになると都合三回も割られる羽目に。初代様ははやくクビ(物理)にすべき。あとガンド避ける時にザイードをリスペクトしててわらった。ハサンはダンスやってるからな。

藤村先生

日常の象徴。流石におとなしめですが、話が話なのでもはや来てくれるだけで並みならぬ安心感があります。晩年近くまでイリヤを連れ戻しに何度もドイツに行っていた切嗣に同行しようと、パスポートを取っていたことが判明。しょんぼりした弟子ゼロ号ことポニテ大河が信じられないくらい可愛かったです。でもそれ以上は泣いちゃうから、そこまでにしておけよ藤村……。

 

あと個人的には、凛の感情を押し殺したような表情が大好物でした。続く?